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専制主義の下で経済と軍事両面の覇権を追求する中国の台頭などを背景に、先端技術の開発や経済活動を、安全保障と一体で捉える経済安保の重要性が高まっている。
政府が6月9日、今年の経済財政運営指針として示した骨太方針原案や成長戦略素案は、いずれも経済安保を柱の一つに掲げ、これに関わる施策に重点的に取り組む方針を打ち出した。
妥当な戦略である。米中対立の激化はもちろん、新型コロナウイルス禍は医薬品を含む重要物資の供給を特定国に依存する危うさを改めて想起させた。
自由や民主主義などの価値観を共有する欧米などと足並みをそろえて経済安保を強化することは、日本にとって喫緊の課題だ。迅速に具体化を図り、効果的に政策を展開しなくてはならない。
人工知能(AI)や量子技術から先端半導体まで、各国が研究開発や生産にしのぎを削る分野は多い。これらは経済成長の基盤となるだけでなく、軍事転用が可能なものも多い。その保全と育成は経済安保の核心である。
骨太方針などで示された施策は多岐にわたる。例えば技術流出の防止策として外為法上の管理を強化するのも一つだ。現状では、日本入国から半年以上の外国人は居住者扱いとなり、外国人への提供が規制されている技術であっても政府の許可なく入手できる。
技術流出の抜け穴と指摘されてきた問題だ。このため、居住者扱いの外国人や日本人でも、外国政府の影響下にあるなどと判断されれば、規制対象に加える管理強化策を来年度中に実施する。
このほか先端技術の実用化を支援するための新プロジェクト創出や、レアアース(希土類)など重要物資の調達先の多元化、先端半導体の国内生産強化などの諸施策を包括的に進めるという。
経済安保上の対応は国際社会の一員としての責務である。中国は経済力を背景に他国への圧力を強めつつある。コロナ禍で関係が悪化したオーストラリアが豪州産品に高関税を課された事実上の報復措置は典型だ。中国の技術窃取を疑う声も国際社会に根強い。
これに対処するためにも、先進7カ国(G7)や日米豪印の4カ国の枠組み「クアッド」などの連携を強め、サプライチェーン(供給網)の再構築や先端技術の流出防止などに万全を期したい。
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2021年6月12日付産経新聞【主張】を転載しています
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